【ご報告】 LINE株式会社に転職しました。
ご報告が遅くなりましたが、私は5年半経営してきた一里舎合同会社を2016年5月一杯でクローズし、2016年6月1日からLINE株式会社に転職いたしました。
ここではお世話になった皆様へのご報告・御礼と今回の決断に至った経緯を自分の備忘録として残しておきたいと思います。
既存事業のジレンマ感
実はここ9ヶ月くらいは今まで行ってきたメディアアプリやカジュアルアプリ、受託開発を徐々にクローズしていきながら、新規事業を立ち上げるべく奔走しておりました。
「このままではせっかく起業した意味がない。」
アプリばかり作ってきた私がIoTをビジネスにする方法を学んだ話
この5年間、スマートフォンのアプリばかり作ってきた私が最近考えていること。
それは、小資本のベンチャー企業がアプリ(特にBtoC)だけでビジネスを組み立てられるバブル時代は終わったということ。(この業界に身を置いている方であれば少なからず共通認識はお持ちかと思います)
アプリやWEBだけで事業を考えようとすると、すでに同じようなアイデアがAppstoreに存在していたり、WEBサービスもググるとだいたい存在していることが
ほとんどで、基本的にはそれら先行者との差別化を図ることが非常に困難になります。
当然ですが、アプリ・WEB完結型サービスはアイデアとプログラムさえできれば、比較的参入が容易にできるため、すぐにレッドオーシャン化してしまいます。
一つヒットアプリがでるとすぐに模倣アプリが量産され、収益がすぐに落ちてしまいます。かつユーザーさんがアプリに飽きるタイミングもより早くなっていてLTV(顧客生涯価値)もかなり下がってきているという体感もあります。
つまりビジネスのストック化が非常に難しくなっているということです。
そんな変化の激しいアプリ業界に身を置いている私が新しい事業を構築しようと日々模索している中で、バズワードの一つとして上がってくるのがこれ。
『IoT( Internet of Things)』です。
だけど、いつも『IoT』と聞いて思うこと。
「IoTってどう儲けるの?」という話。
モノを作って、その販売利益で儲ける?
・・・
それって厳しくない?
ビジネス的な拡大って見込めるの?
投資リスクばかりに目が行き、先の展開が見えていない感じ。
これではアイデアが思いついても、投資しようとはならない。
そんな狭い了見しか持ち合わせていなかった私がとある勉強会に行き、『IoT』のビジネスモデルを学んだ話です。
これは『IoT』に限らず、昨今のビジネスモデル全般で活かせる考え方かと思います。
まず『IoT』でビジネスをやろうとすると、みんなこう考えると思います。
例えば、
「耳栓型の体温計を開発して、それをネットに接続、健康状態をスマホアプリで管理できるようにしたら便利ではないか。それを既存の体温計より価格を上げて売ってみたらどうか。」
仮にこの考え方で、プロダクトイノベーションが生まれ爆発的なヒット作が誕生したとしましょう。
プロダクトイノベーションのみでプロダクトはヒットした当初はそれなりに売れたとしても、すぐに他社がこぞって資本を投入し、模造品を作り参入を図ります。
そうすると単純にモノ自体の差別化しかないため、すぐに値下げ競争が発生し、コモディティ化、あっという間に本家の売り上げも下がり、場合によっては2番手、3番手がクオリティを上げてきた場合、追い越されてしまうという現象が発生します。
これでは継続的にビジネスを行うことがしづらくなりますよね。
これがまず第一の壁となります。
そこで急務となるのが、ビジネスモデルの構築です。
例えば、顧客のスイッチングコストを高める施策を打ったり、データを販売するなどといったことを展開していくことです。
では具体的にどうするのか?
『IoT』を継続的ビジネスに昇華させるための一つの考え方をフェーズ①〜⑥までまとめてみました。
フェーズ①ワンタイム課金:
センサー内蔵のプロダクト・または多目的型センサーをワンタイム課金(売り切り)で販売する。
フェーズ②サービスフリーミアム:
センサーを通じた無料及びプレミアムのサービスを提供する
フェーズ③サービスインストールベース:
物理的プロダクトは無料または安価で、センサーを通じたサービスで利益を得る(ジレットモデル)
フェーズ④パッケージ化されたデータ販売:
センサーを通じた収集された価値のあるデータまたはノウハウを販売する
フェーズ⑤収益シェア/パフォーマンスベース:
利用者のプロセスまたはリソースの最適化によって得られた利益または削減できたコストの一部を得る
フェーズ⑥マルチサイドエコシステム:
性格の異なる複数の顧客からの多様な収益の流れによって利益を得る
これらを具体例にして考えてみます。
フェーズ①:スマート体温計の販売→既存の体温計にネット接続機能を付加。
フェーズ②:ユーザーデータを収集することで、ユーザーがどういう状態の時に何をすべきか自動で医者の代わりに教えてくれるサービスを提供。
フェーズ③:体温計を無料または安価で配り、プログラムに参加している人々のデータを貯める。コミュニティ(学校など)単位で健康状態が可視化される。個人がそれらのデータを参照し、判断要素を得ることができる。データを公的機関に販売するなど。
実はフェーズ3までがスマート体温計Kinsa Smart Thermometerが実際に展開してきた事例です。
ここからは想像の世界です。
フェーズ④:より広範囲にわたるエコシステムの生成。エリア毎の健康状態の可視化。ex.横浜で子供がインフルエンザ発生→東京で働く親がインフルエンザ予備軍であることがわかりアラートを上げられる。
フェーズ⑤:収集されたデータをもとに、病気を患う予備軍を事前に検知、従業員の健康維持に貢献した分の収益を得る。
フェーズ⑥:これまで得られた知見・ノウハウ・技術を他社に販売。
ex.テスラがバッテリー技術を他社に販売する。
いかがでしょうか。
ただプロダクトイノベーションのみを考えるのではなく、その先にあるビジネスモデルイノベーションを戦略として描いていくと、『IoT』を継続的ビジネスとして考えていく可能性が広がってくる気がします。
「取引コストの削減」が『IoT』が注目される理由でありテーマです。
下記のように注目されている 『IoT』も全て「取引コストの削減」をしてくれるサービスという共通点がありますね。
トイレで健康診断データをクラウドに載せて自動で健康診断できるヘルスモニタリングサービス
人同士が会わずに鍵をシェアできるスマートロック
これらの『IoT』も単なる使い勝手の勝負からビジネスモデルの勝負へ考え方をシフトしていかないと継続的な成長は見込めないでしょう。
最後になりますが、ここに記載したことは、この勉強会で学んだことです。
もし私のように『IoT』について知見を深めておきたいという方をチェックしてみると良いかもしれません。
ITベンチャー創業後3年5ヶ月を経て想う3つのこと
はてなブログに移行して初めてのブログになります。どうもはじめまして、一里舎代表の藤原と申します。
今までブログを書く機会は1年に1回程度だったのですが、タイミングもそろそろかと思い、書いてみることにしました。
2010年11月26日に会社を創業して、ちょうど今日で丸3年5ヶ月立ちました。事業内容は専らスマートフォンアプリの企画開発を行ってきまして、数えてませんが開発してきたアプリは40本以上くらいかと思います。
ご紹介できるアプリとしては、『ゲームタイムズ』というゲームメディア専門のキュレーションサービスや『脱出ゲームS203オービットエクソダス』、他には協業モデルでイグニスさんとだーぱんシリーズのゲームなどを開発してきました。
今、会社のメンバーは4.2人くらいなります。(0.2人は週末だけお手伝いしていただいている方の分です)。私、共同代表のエンジニア、デザイナー(兼ディレクター)、3Dデザイナー、サーバーエンジニアという構成です。
当社は完全自己資本でやっておりまして、特に借金などもしていないので、自分たちで稼いだ分を事業投資や採用に回すというサイクルでやっております。
正直、爆速でやっておられる他のベンチャーさんと比較すると、事業拡大のスピードはそこまで早くないかと思いますが、今無理に拡大だけしてもどうかな?と思う部分もあるので、一旦は自分たちの事業推進の力をつけながらまずは実績作りに日々勤しんでおります。(拡大したくないという意味ではありません!)
会社の紹介はこのあたりにして、会社創業3年5ヶ月後にようやくブログを書く気になったので、今ここまで走ってきた想ったことを書き連ねておこうと思います。
1.運転資金のことはなんとかなる(何とかなった)
創業前に一番不安だった資金面については、色んなステークホルダー様のお陰もありまして、丸3年も経つとスマフォアプリマーケットオンリーでも、ある程度は何とかなるのだということがわかりました。これを達成するには少なくとも会社のメンバー一人一人がある意味一人でやってもやっていけるレベルまで持っていく必要があると思います。(大手のサラリーマン出身の人は意外と最初難しいかも)
またこれは社員が食っていけるというレベルで、そこそこの事業投資を行うにしては足りなすぎるくらいの額です。
2.少数で色々やるなら非運用型で
最初の頃はとにかく色んなジャンルのアプリを数たくさん作って、その中で芽が出てきた事業を伸ばしていこうというスタイルでした。実績も経験も少なかった今までは模索するという意味でそれでもよかったかもしれませんが、今としてはそのやり方は少しシフトしていく必要があると考えています。ある程度いけそうなジャンルを見つけたら、あとはそこで実績を作る(やり切る)フェーズが今だと思っています。今までは一発屋でもある程度うまくいっていましたが、これだけマーケットが大きくなってくると、それでは勝負にならないので、バズワードになっているグロースハックやAARRRなどの概念をいち早く掴んだものが次の勝者になると考えています。
そして、当たり前の話ですが、数打つならできるだけ日々のルーチン運用の工数ができるだけ少ない非運用型を推奨します。(当社ではそれを考えずに数作ってしまい、早々にクローズした案件もありました。。)
3.やっぱり掛け算式の事業作りは難しい
これはまさに今私の課題だと考えているのですが、
一人一人の能力を足し合わせる事業はできても、掛け合わせる事業作りは本当に難しいと思っております。
特に我々のように複数の事業をそれぞれのメンバーが回しているような構造の組織の場合、社員同士のコミュニケーションも十分とれているわけではないので、それぞれの思考やノウハウを共有できる場も少なく、結果組織としてバラついてしまうこともあります。
この原因は会社としての戦略やビジョンなど欠如以外の何者でもないと思っていますが、とってつけたようなビジョンを作るくらいならないほうが良いという方針でやってきたので、諸先輩型もしよろしければアドバイスいただけますと幸いです。
ちなみに当社は全員がリモートワーク型スタイル(それぞれが自宅やコワーキングスペースなど別々の場所で働くスタイル)で仕事をしています、このあたりについて考える事はまた次回以降ブログに書きたいと思います。
折角書くなら5つくらい書こうと思いましたが、最初から意気込み過ぎても続かないので、初回はこんな感じで終わろうと思います。
最後に蛇足ですが、現在創業企業の廃業率は、概ね3年以内70%と言われているようですが、これITに限るとどれくらいなのでしょうね?意外と結構生き残っていると思うのですが。
お忙しいところ、ご拝読ありがとうございました。
一里舎 藤原